もし日本が第二次世界大戦に負けていなければ、旅順・大連は、平成9(1997)年まで日本の租借地でした。

また、南満州鉄道株式会社が経営していた新京(長春)・旅順間の鉄道も、同じく1997年まで日本に租借権がありました。(1997年に中国はこの鉄道を買い取ることができる。)

◆ 今回は、旅順・大連及び鉄道の租借権について、以下のとおりまとめてみました。

1. 1898(明治31)年、ロシアが清国から遼東半島の租借権と鉄道敷設権を獲得。

日本は日清戦争に勝利し、下関条約によって遼東半島を獲得しましたが、1895年4月23日の仏・独・露からの三国干渉に屈し、清国へ返還しました。

その後ロシアは、清国に対して日本への賠償金の借款供与を申し出、その見返り(遼東半島返還・借款供与)として1896年に清国と協定(露清密約)を結び、満洲北部に鉄道の敷設権を得ることに成功しました。さらに1898年には、遼東半島南端(旅順・大連)の租借権とハルビンから大連・旅順に至る支線の敷設権も獲得しました。

この満州北部の路線とハルビンから南に延びる支線を総称して東清鉄道といいます。

旅順・大連 租借期間は25年(つまり1923年まで)
ハルビン・旅順間の鉄道 36年後(1934年)に中国はロシアから鉄道を買い取れる。

2. 1905(明治38)年、日露戦争の講和条約(ポーツマス条約)により、日本が権益を受け継ぐ。

① ロシアは、旅順・大連の租借権を日本へ譲渡する。
② ロシアは、東清鉄道の南部支線のうち、長春(新京)・旅順間を日本へ譲渡する。
③ ただし清国の承諾が必要である。

第5條
露西亜帝国政府ハ清国政府ノ承諾ヲ以テ旅順口大連並其ノ附近ノ領土及領水ノ租借権及該租借権ニ関連シ又ハ其ノ一部ヲ組成スル一切ノ権利、特権及譲与ヲ日本帝国政府ニ移転譲渡ス露西亜帝国政府ハ又前記租借権カ其ノ効力ヲ及ホス地域ニ於ケル一切ノ公共営造物及財産ヲ日本帝国政府ニ移転譲渡ス
両締約国ハ前記規定ニ係ル清国政府ノ承諾ヲ得ヘキコトヲ互ニ約ス
日本帝国政府ニ於テハ前記地域ニ於ケル露西亜国臣民ノ財産権力完全ニ尊重セラルヘキコトヲ約ス

第6条
露西亜帝国政府ハ長春(寛城子)旅順口間ノ鉄道及其ノ一切ノ支線並同地方ニ於テ之ニ附属スル一切ノ権利、特権及財産及同地方ニ於テ該鉄道ニ属シ又ハ其ノ利益ノ為ニ経営セラルル一切ノ炭坑ヲ補償ヲ受クルコトナク且清国政府ノ承諾ヲ以テ日本帝国政府ニ移転譲渡スヘキコトヲ約ス
両締約国ハ前記規定ニ係ル清国政府ノ承諾ヲ得ヘキコトヲ互ニ約ス

 

3. 1915(大正4)年、対華二十一か条の要求により、租借期間を99年間に延長。

第2号 南満東蒙に於ける日本の地位を明確ならしむる為の条約案

日本国政府及支那国政府は、支那国政府が南満州及東部内蒙古に於ける日本国の優越なる地位を承認するに依り、ここに左の条款を締結せり。

1.両締約国は、旅順大連租借期限並南満州及安奉両鉄道各期限を、何れも更に99か年づつ延長すべきことを約す。

2.日本国臣民は、南満州及東部内蒙古に於て、各種商工業上の建物の建設又は耕作の為必要なる土地の賃借権又は其所有権を取得することを得。

3.日本国臣民は、南満州及東部内蒙古に於て、自由に居住往来し各種の商工業及其他の業務に従事することを得。

4.支那国政府は、南満州及東部内蒙古に於ける鉱山の採掘権を日本国臣民に許与す。其採掘すべき鉱山は別に協定すべし。
①支那国政府は、左の事項に関しては予め日本国政府の同意を経べきことを承諾す。
②南満州及東内蒙古に於て他国人に鉄道敷設権を与え、又は鉄道敷設の為に他国人より資金の供給を仰ぐこと

5.南満州及東部内蒙古に於ける諸税を担保として他国より借款を起こすこと
支那国政府は、南満州及東部内蒙古に於ける政治財政軍事に関し顧問教官を要する場合には、必ず先ず日本国に協議すべきことを約す。

6.支那国政府は本条約締結の日より99か年間日本国に吉長鉄道の管理経営を委任す。

旅順・大連の租借権 1898年+99年 = 1997年
長春・旅順間の鉄道    〃       〃

* ロシアが清国から租借権を得た1898(明治31)年から起算します。

満州と日本 ⑤ ~ 下関条約による遼東半島の割譲 ~