◆本時の目標
・コロンブスがスペイン国王と取り交わした契約について考えることで、大航海時代が始まった背景に迫る。
・他の投稿で、コロンブスの経歴や第1回航海の行程について詳しく紹介しますので、それをご覧になった上で、この教材をご活用ください。
・子ども向けの 学研まんが世界の歴史9『ルネサンス・新航路発見と大航海士コロンブス』 もお勧めです。
★ 1492年8月3日、スペイン国王の援助を受けてパロス港を出航しましたが、航海に必要な資金に注目して授業を組み立ててみました。
授業の展開は、以下のとおりです。
1 最初に、コロンブスはポルトガル国王『ジョアン2世』に資金援助を申し込みますが、断られました。
2 困ったコロンブスは、スペイン国王にお願いしています。
3 ここで「子どもたちにコロンブスになったつもりでスペイン国王を説得する作戦を考えよう。」という課題を与えました。
*日本円で約10億円と説明しました。
5 次のようなワークシートを準備して、グループで話し合わせました。
*【班活動プリント】コロンブスの航海『200万マラベディ獲得作戦』
➊ 王様、わたくしに200万マラベディ(10億円)の資金援助をお願いします。
➋ わたくしは西回で ( ) へ航海するつもりです。
➌ その土地で ( ) を手に入れてきます。
➍ 航海の成功の確率は ( ) です。
➎ たぶん利益(もうけ)は ( ) です。
➏ 私の取り分は ( ) ではどうでしょうか?
➐ とても危険ですから ( ) をお願いします。
5 コロンブスの航海の後になりますが、ポルトガル国王の命令を受けてインド航路を発見したバスコ・ダ・ガマがどのような栄誉を授けられたかを、揺さぶりヒントとして机間指導しながら、子どもたちへつぶやきました。
*バスコ・ダ・ガマの船団は、1497年7月8日にリスボンを出発。
《 バスコ・ダ・ガマの場合 》
・ポルトガル国王の命令で、インド航路を発見する。
・王族や貴族だけに許される「ドン」の称号を与えられた。
・インド提督に任命された。
・終身インド艦隊総司令官にも任命された。
・相続人に権利を引き継げる30万レアル(750クルサド)の年金が与えられた。
・別に3000クルサドの年金も手にした。
・航海の成功を記念して、リスボンにジェロニモス修道院が建設された。
6 各班の考えを発表した後、サンタ・フェ契約(1492年4月17日)の内容を教えました。Wikipediaから引用。
・コロンブスは発見された土地の終身提督(アルーランテ)となり、この地位は相続される。
・コロンブスは発見された土地の副王(ピリレイ)及び総督(ゴベルナドール・ヘネラール)の任に就く。各地の統治者は3名の候補をコロンブスが推挙し、この中から選ばれる。
・提督領から得られたすべての純益のうち10%はコロンブスの取り分とする。
・提督領から得られた物品の交易において生じた紛争は、コロンブスが裁判権を持つ。
・コロンブスが今後行う航海において費用の1/8をコロンブスが負担する場合、利益の1/8をコロンブスの取り分とする。
★資金援助は175万マラベディ(うちアラゴン王国からの国庫からは35万マラベディ)でした。
★残りの25万マラベディは銀行などからの借金でまかなっています。
7 1492年8月3日、スペイン国王の援助を受けて、3隻の船を率いてスペインのパロス港を出航。
8 同年10月12日、カリブ海のバハマ諸島の未知の島に上陸。サン・サルバドル島と名づけました。
9 1493年3月15日、スペインのバロス港に帰港。
10 4月半ばにバルセロナで、両国王(イサベル女王、フェルナンド王)に謁見しました。
*第1回の船旅では黄金を見つけることができませんでしたが、帰りの船にはパイナップル、タバコ、トウモロコシ、オウムなどの珍しい品物が積まれていました。
*6人の先住民とわずかな黄金を含む品々を献上したところ、両国王は大喜びでした。
◎コロンブスの考え方については、 同志社大学人文科学研究所第9研究会 人文科学研究所第30回 公開講演会 がとても参考になります。
ポルトガル、ジェノヴァ、スペインの商人たちは、15世紀中頃から積極的に大西洋に進出し、「奴隷狩り」に手を添めていました。一方、キリスト教君主に属さない島々は、キリスト教を布教するという目的で最初に発見したキリスト教君主が領有(ポセシオン)できるという「慣行」的理論も定着していきました。コロンブスが到着したサン・サルバドール島で最初に行なった儀式もカトリック両王のための「領有宣言」でした。そしてコロンブスは、発見した島々に金を探すわけです。だが期待通りの金が発見されないことが明らかになると、やがてこれまでの地中海商人の行動に倣って、先住民インディオを奴隷化する方向に傾いていきます。