◆本時の目標
・大山崎油座について考えることで、室町時代の商工業の実態に迫る。

◎大山崎油座について教えることで、生徒たちに室町時代の商工業の様子について理解させることができないものかと考え、この教材を作りました。

◎大山崎油座のメンバーは離宮八幡宮の神人で、エゴマから油を絞り販売していました。また、本社である石清水八幡宮に油を納めたり神事に携わったことから、幕府や当時の実力者から保護を受けました。
*Googleマップで調べると、離宮八幡宮とその本社である石清水八幡宮は、淀川を挟んで対峙しています。
*大山崎の神人については、ネットに詳しい解説があります。
http://www.abura-ya.com/rekishi/rekish8.html

◎『座』が存在した背景を説明するためには、教師は関所のことを正しく理解しておく必要があります。なお、Wikipediaには次のように記されています。

中世には、朝廷や武家政権、荘園領主・有力寺社などの権門勢家がおのおの独自に関所を設置し、関銭(通行税)を徴収した。室町時代には京都七口関が設置され、京都に入るにはいずれかの関所を通行せざるを得ない状況が生まれた。
関所は中世の交通における最大の障害であったが、同時に関所を設置した勢力は関銭を納めた通行者に対して通行の安全を保護する義務を負った。

中世の関所は、人や武器の出入りを取り締まるのものではありません。また商品に税をかけることもありませんでした。有り体に言えば、今の有料道路のように、通行料をとって儲けようという性質のものです。

*「大学受験の道具箱」というホームページに、『室町幕府の財源11個と「座」の仕組み』という頁がありますので、参考としてください。

 

◆授業の展開

(1) 足利義教(第6代)のニックネームについて考える。
→「くじ引き将軍」と陰口を言われた将軍。石清水八幡宮でくじ引きが行われた。

*グーグルマップを使って、石清水八幡宮が京都の裏鬼門(南西)にあたる場所にあることを確認した上で、朝廷・幕府にとって特別な存在であったことを説明する。
*中世の人々が今日では考えられないほど神仏をおそれていたこと、村同士でトラブルがあったときには「湯起請」が行われたことなどについても話をする。

(2) エゴマの画像を見せ、その油が明かりの燃料として使われていたことを説明する。

(3) 実際に明かりを灯してみよう。
・教師が小皿を1つ準備し、教卓の上に置く。
・そのお皿に油を入れる。(私はオリーブオイルを使用)
・生徒に灯芯を作らせる。 *灯芯の作り方
・出来のいい灯芯のいくつかをピックアップし、実際にお皿の上で灯してみる。

(4) どのような人が油を買っていたのかを考える。
→油は高価なものであることを説明すると、生徒は都の貴族や大きなお寺や神社が使っていたことに気づく。

(5) 離宮八幡宮の神人たちが、エゴマから油を絞る技術を身に付け、京都で販売していたことを説明する。

(6) 大山崎の人たちが、油を扱う他所の商人と競争し、自分たちの商売を守るためにどのようなことをしたのかを考えさせる。
⇒油座という同業者組合を設け、岩清水八幡宮の神事に携わり、その庇護の下で商売をした。石清水八幡宮の影響力は大きく、幕府や実力者から保護を受けることができ、また神威をかざすことで上手く特権を拡大していった。

*私は➀関所、➁エゴマの仕入れ、➂販売先の確保の観点から考えさせました。
*大山崎ではエゴマを栽培しておらず、遠方から仕入れていた。エゴマを手に入れるときも石清水八幡宮の保護を受けていることは、この油座にとって有利だった。
*石清水八幡宮の影響力のおかげで、多くの関所において通行料免除の特権があり、西は九州、東は美濃までの販売網をもっていた。

◆最後に、次のことを念頭に置いておくと『座』と『関所』のことがよく理解できると思います。
➀本所は、座を保護する代わりに見返りをもらっていた。つまり座と本所はもちつもたれつの関係にある。
➁有力な武家、荘園領主・有力寺社はたくさんの座を抱え、それらを保護することで潤っていた。
➂本所は、自分が庇護する座の関銭(通行料)を他の有力者に免除してもらっていたと推察される。このことは、本所同士ではお互い様であったと思う。