現代のアメリカの暮らしや産業について教える際、交通手段の実態についてしっかりと押さえておく必要がありますが、今回は、アメリカの旅客鉄道について紹介します。
アメリカは車社会であり、長距離の移動には航空機で移動するというイメージがあると思いますが、交通手段の現状を大まかに整理すると次の通りです。
短距離 | 長距離 | |
旅客輸送 | 自動車 | 航空機 バス |
貨物輸送 | トラック | 鉄道 船 |
鉄道は、長い距離を大量に運ぶ交通手段としては健在ですが、旅客輸送の面では、ぱっとしないのが現状です。
第二次世界大戦後、自動車や航空機に押され、鉄道旅客輸送は衰退を始めました。その傾向は1960年代に加速し、多くの鉄道会社が旅客営業の廃止に踏み切りました。
このような現状の中、鉄道旅客輸送の消滅を防ぐため、1971年に アムトラック が発足しました。
*American” と “Track” の合成語
アムトラックの正式な名称は、米国旅客輸送公社(National Railroad Passenger Corporation)といい、連邦政府が株式を所有する会社です。
すでに多くの旅客鉄道が営業を停止していたため、主要都市間で週3便 ~ 毎日1本という最低限の列車が、アムトラックによって維持されています。
アメリカの鉄道がお好きな方のウェブサイト Amtrak Towns – アムトラックと旅の記録 を見ると、アムトラックのことがよく分かりますが、日本やヨーロッパの旅客鉄道に比べると、とにかく旅に時間がかかり過ぎるという印象をぬぐえません。
例えば、五大湖の南側を走る レイクショア・リミテッド号(Lakeshore Limited) については、シカゴ~ ニューヨーク間の所要時間が19時間もかかるようです。
*他の乗り物についてネットで調べてみたところ、自動車なら14~16時間(休憩込み)、航空機だと2時間、長距離バスだと19~24時間という書き込み(かつかつシカゴ日記)を見つけました。
のんびりとした鉄道の旅が好きな人には魅力的なのでしょうが、忙しいビジネスマンが旅客鉄道を利用するとは思えません。
★このサイトには、路線図 Amtrak Route Map があり、旅客鉄道の中心が シカゴ であることが視覚的に理解できます。