教養とは何か ② ~ 18世紀に生まれた教養 ~
教養に関する書籍を調べたところ、『これが「教養」だ』(著:清水真木)という本を見つけ早速購入しました。
著者は哲学者であり、この本は、教養とは何なのかについて、その成り立ち・歴史の側面からアプローチした「書下ろし」です。
*教養は18世紀にヨーロッパで生まれた、とても若い概念で、日本で普及するのは大正時代以降とのことです。
それから、教養について次のようなことが記されていて、さらにびっくりしました。(Kindle版:No.96)
私どもが「教養」という言葉を耳にしまして、そしてそこから連想しますもの、それは、種類という点でも、数という点でも、また範囲という点で申しましても、多く、大きく、広いものであります。教養は何にでも結びついてしまいます。教養と結びつけることのできないものを見つける方が大変なくらいであります。まず「教育」ですか、それから「文化」「読書」「古典」、あるいは「人格」「文学」「歴史」「科学」「道徳」「啓蒙」「理性」「宗教」・・・・・・・・、私どもが思いつくもので、教養とはどう考えても結びつかないものなどないように思われてまいります。しかしながら、「教育」「文化」「読書」「古典」等々、これらはいずれも、教養とはもともと何の関係もないものなのであります。
◆ 以下、要点を箇条書きしますが、とても内容が難しいです。ご自分で、この本を実際に読まれることをお勧めします。
①教養は、18世紀にヨーロッパで生まれた。(啓蒙主義の時代)
②市民社会は面倒な社会であり、それまで1まとまりだった生活が「公共圏」「私有圏」「親密圏」の3つに分裂してしまった。(No.273)
③「自分らしさ」を見つけ出す過程と、見い出されるはずの「自分らしさ」が、本来の意味での「教養」である。(No.428)
④しかしながら、その当時の人々は、結局のところこの本来の意味の教養を手に入れることはできなかった。(No.477)
⑤ドイツにおいて、「自分らしさ」が「人間性」にすり替えられた。(No.501)
◆ 日本においてはどうかというと、Kindle版ではNo.540以降に解説があります。
①現在の意味での「教養」は、大正時代から使われるようになった。
*ただし、大正時代は「修養」という言葉が現在の教養の意味で使われていた。②江戸時代にはすでに教養という言葉があったという反論があるかもしれないが、そんなことはない。
*『江戸時代の武士にとって朱子学は当然の教養だった』という文章に対して、それにはアナクロニズムという誤りが含まれているという解説がある。
*アナグロニズムとは、「ある時代に知られていなかった考え方を、その時代に持ち込んで現状を説明すること」という意味である。③新渡戸稲造が第一高等学校の校長していたときに、一高の生徒たちに与えた影響がきっかけになり、いわゆる「教養主義」なるものが生まれた。
◆ この本には他にも興味深い項目があります。特に、ナポレオンに敗れた後のプロイセンの教育改革や、文学の古典についての説明が初耳で、面白く読みました。