前回に引き続き、『学校とICT』(Sky株式会社)の2019年8月号、小川正人先生(放送大学教授)のレポートを参考に、文部科学省と財務省との駆け引きについて、私なりに要点を整理してみました。
(1) 文部科学省のガイドライン(2019年1月)が示され、公立学校教職員の時間外勤務の上限が月45時間、年間360時間と明記される。
(2) しかしながら、少子化で児童生徒数の減少が見込まれるため、政府や財務省は教職員定数の削減という方向にかじを切っている。
(3) さらに、官邸主導により幼児教育や高等教育の無償化政策が優先されたため、財務省は教育分野の新しい諸施策に追加財源を支出することに強い抵抗を示したといわれている。
*官邸主導により、消費税率アップ(8%→10%)で得られる財源約6兆円のうち、1兆5千億円が幼児教育と高等教育の無償化にあてられることが決定。
(4) 財務省は、部活動を始めとする本来的な業務以外の周辺的・境界的な業務を教員が抱えすぎているのが問題であり、教員の大幅増員を(文部科学省が)要求する前に、業務の明確化・適正化を図るべきという姿勢を示している。
(5) 以上のような政府内の政治力学等によって、文部科学省は働き方改革の優先的な取組の課題として、(教員の大幅増員ではなく)業務の明確化・適正化を先行させることになった。
(6) それと並行して、文部科学省は確実に必要とする教職員の増員をめざすために、勤務時間を客観的で適切な方法で管理し、勤務実態のデータを蓄積させながら教育施策のPDCAサイクルを循環させようとしている。