以前、南米の農業について記述した際、ブラジルにおいて、コーヒー豆栽培などのモノカルチャー経済から抜け出す取り組みとして、近年、大豆の栽培がさかんになっていることに触れました。
今日ネットで調べ物をしていたところ、たまたま、世界規模で活動するNGOである、WWF(世界自然保護基金)のおもしろいレポートを見つけたので紹介します。
拡大する大豆栽培 影響と解決策 発行年:2014年
*発行者:WWF(世界自然保護基金、旧世界野生生物基金)、スイス・グラン
◆このレポートでは、拡大する大豆栽培が増えている背景について説明するとともに、ブラジルのアマゾンやセラードにおいて森林の減少が進んでいる実態についても詳しく記されています。
◆大豆の用途については、次のような説明がされています。
大豆は人が食品としてそのまま食べることもあるが、ほとんどは圧搾して高タンパ クの大豆ミールに加工し、それと同時に大豆油のほか、天然の乳化剤であるレシチン などの副産物を得ている。大豆ミールは主に家畜用飼料になる。大豆油は食品や生活 用品(化粧品や石鹸など)に使われるほか、バイオ燃料としても使われる。
飼料:大豆の生産拡大が続いている最大の要因は、食肉消費の増大にある。世界の 大豆消費量のほぼ4分の3は家畜用飼料、特に家禽類と豚の飼料に向けられている。 1967~2007年の間に、豚肉生産高は294%、鶏卵生産高は353%、鶏肉生産高は 711%増加している。一方、これと同じ期間に、これら生産物の相対コストは低下して いる。家畜用飼料の最大の供給源である大豆は、このコスト低下を可能にした工業型 農業モデルの重要な要素である。
食料:大豆の約6%は、主としてアジア諸国で、豆そのものか豆腐や醤油などの加工食 品として食用にされている。大豆はまた、焼き菓子やパンなどの材料やマーガリン、 食用油脂の原材料として使われるほか、ボトル入り調理用大豆油としても使われる。 大豆から抽出されたレシチンは、加工食品の添加物としてよく使われ、チョコレート ・バーからスムージーに至るまで、あらゆるものに含まれている。
燃料:大豆油はバイオディーゼルの原料としても使われている。世界の大豆生産量か らみれば、この利用はわずかな部分を占めるにすぎないが、アルゼンチンなどの国々 では、これが大豆生産拡大の一因になっている。
◆このレポートからは、中国などの発展途上国の経済成長が、豚肉、鶏肉、乳製品に係る世界的な需要増につながっており、その結果、大豆の生産が激増していることが読み取れます。
◆私たち社会科の教員は、大豆の生産が世界的に増えている実情と背景を押さえた上で、その影響についても理解しておく必要があると思いますので、今回、紹介しました。